2023年の天体イベントの中で最も注目されているのが「ペルセウス座流星群」です。 ペルセウス座流星群は毎年同じ時期に見ることができる3大流星群のひとつで、条件がよい時には1時間あたり80個以上の流星が観測することができます。 2023年は流星群の活動が活発になるタイミングが新月に近く、月の影響をほとんど受けない好条件となります。 カメラを趣味にしている人の中には、「見るだけでは勿体無い」「写真に撮って残したい」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そんな方にこの記事では、2023年のペルセウス座流星群を写真で撮るために必要な情報を、星景撮影初心者の方から中級者向けに一から解説していきます。 記事は次の4部構成となっていますので、順番に読んでもいいですし、気になる記事だけを取り上げて読んでいただくこともできます。
- 撮影地編:東海地方周辺で星空が観測しやすい場所を紹介します。
- 撮影機材編:星空撮影に必要な機材と撮影計画を立てるためのアプリなどを紹介します。
- 撮影設定編:星を撮影するために最適な設定方法を紹介します。
- カメラ・レンズ編:星空撮影に適したカメラやレンズを予算や目的別に紹介します。
この記事を全て読み終わる頃には、ペルセウス座流星群を撮影イメージが固まり、流星群だけでなく天の川などの星景写真のスキルが上達しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。 写真は撮らなくても見るだけで十分という方にとっても、おすすめの撮影地は参考になると思いますので、この夏友達や家族と星を見に出かけてみてはどうでしょうか。 この記事を書いている私は、カメラ歴10年以上、フォトマスター検定試験1級の資格を取得しているYOSHIです。 初心者の方がカメラを手にして写真を楽しむことができるように、カメラやレンズの話、撮影スキルなどについて紹介しています。
また、私のブログではコンデジや一眼カメラを買おうか迷っている人が、自分にはどんなカメラやレンズが合 うのかという質問にお答えしていますので、気になる方はお問い合わせページからご連絡ください。
星景写真の撮影方法
星景写真が他の風景写真と違って難しく感じるのは、露出(明るさ)やフォーカス(ピント)をなどの設定をすべて自分で変更しなければならないからです。 ですが、この露出とフォーカスの設定方法さえ理解できれば星景写真はそれほど難しくありません。 結論から言うと次の4つのポイントを押さえれば大丈夫です。
- 絞り:開放f値を使用
- シャッタースピード:10秒から15秒の間(レンズの焦点距離により異なる)
- ISO感度:800〜6400(空の明るさによって異なる)
- フォーカス:マニュアルフォーカスで星が点で見える位置に合わせる
これだけではなぜこの設定にするのか理解が難しいと思いますので、ここからは「露出の設定」と「フォーカスの設定」に分けて詳しく解説していきます。 そのあと、カメラの細かいメニュー設定について解説します。
露出の設定方法
露出(明るさ)というのは、「絞り(f値)」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つの要素で決まります。 星景写真では、これらすべてを自分で設定する必要があるため、撮影モードは「マニュアルモード」を使用します。 絞り、シャッタースピード、ISO感度がよくわからない方は、こちらの解説をご覧ください。
絞りの設定
真っ暗な場所で星のように小さな光を撮影するためには、カメラにより多くの光が入ってくるようにしなければなりません。 そのため、星景写真においては開放f値が低いほど有利とされていて、f1.4やf1.8に設定できる単焦点レンズがあればノイズを抑えた綺麗な写真を撮影することができます。 ですが、星景写真だけのためにこれらのレンズを揃えようという人はあまり多くなく、キットレンズなど標準レンズで撮影する場合がほとんどだと思います。 その時は、なるべくf値を下限いっぱいまで下げて撮影するようにしましょう。 f値の変更はカメラの上部についているダイヤルを回すか、レンズ側の絞りリングで変更することができます。 コンデジの場合は、ダイヤルかコントロールキーでf値を変更します。
シャッタースピードの設定
カメラに多くの光を取り込むためには、絞りを開けるかシャッタースピードを長くする必要があります。 絞りについては、前述したように開放f値を使用すれば良いのですが、シャッタースピードはどうでしょうか? シャッタースピードもとにかく長くすれば良いかというとそうではありません。 そこには地球の自転が関係していくるからです。 シャッタースピードを長くしすぎると、星が伸びて線になってしまいます。 星を点で捉えるためには、星が伸びずに撮影できるシャッタースピードより短く設定する必要があります。 このとき目安となるのが200ルールです。 200ルールというのは、200を焦点距離で割った数値が星を点で捉えるためのシャッタースピードと言われています。 例えば、焦点距離が20mmのレンズで撮影する場合は10秒がシャッタースピードの目安で、40mmで撮影する場合は、5秒が目安となります。 星景写真では焦点距離が24mmから14mmくらいのレンズが多く使われるので、だいたい10秒から15秒の間で撮影すれば星が伸びず点で捉えることができます。 開放f値を使って15秒くらいで撮影したけど、写真が暗いと感じたりノイズが出てざらざらするといった場合は、赤道儀を使うという方法もあります。 赤道儀というのは、地球の自転の回転速度に合わせて、回転する台座のことです。 赤道儀を使うと、1分以上シャッターを開けていても星は点で撮影で着るので、シャッタースピードを稼ぐことができます。 明るいレンズがない場合や、さらにノイズを少なく撮影したい場合などには便利なアイテムです。
ISO感度の設定
f値とシャッタースピードが決まったら、最後にISO感度を使って明るさを調整します。 ISO感度は、同じ星空を撮影するにしても、撮影する場所や月明かりなどによって設定値が変わってきます。 空が明るい場所であればISO400でも撮影できる場合がありますが、肉眼で天の川が見える場所では、ISOを3200や12800などにしないと撮影できないことがあります。 この時、参考になるのがヒストグラムです。 ヒストグラムとは、写真全体の明るさの分布図のようなものです。 この写真の場合は、空の明るさの分布が真ん中の山で地上の木道の風景が左の山になります。 ヒストグラムは左が暗い領域で右が明るい領域になります。 分布が左に偏ると全体的に露出が足らず、右に偏ると露出をかけすぎということになります。 星を適正な明るさで撮るためには、空の明るさの山を左から1/3〜中央くらいすると適正な露出が取れていると判断することができます。 最初はISO感度を1600あたりで撮影してみて、再生画面でヒストグラムの分布を見てからISO感度を上げるか、下げるかを判断するといいでしょう。 モニター上で綺麗に撮れているから大丈夫と思っても、帰ってPCで見てみると露出が足りていないということがよくある失敗例です。 ISO感度を調整する際には、必ずヒストグラムを確認するようにしましょう。
フォーカスの設定方法
星の光はとても小さいので、オートフォーカス機能を使ってもピントが合わないことがほとんどです。 この場合は、カメラをマニュアルフォーカスに合わせて撮影します。 マニュアルフォーカスの切り替えは、カメラ側で行う場合がほとんどですが、レンズによってはAF/MFの切り替えスイッチがあったりするので確認しておきましょう。
フォーカスモード
引用:SONY
AF/MF切替スイッチ
引用:SONY
マニュアルフォーカスに切り替えたあとは、レンズについているフォーカスリングを回転させながらピントを合わせていきます。 ピントを合わせようと思ったけど、画角がそのままで確認しずらい時は、メニューの設定から「ピント拡大」や「MFアシスト」機能をONにします。 ピント拡大はマニュアルフォーカスを使って撮影する際によく使うので、カスタムボタンに割り当てておくと便利です。 MFアシストというのは、絞りリングを回したときに自動的に画像が拡大される機能です。 星空の中で一番明る星を探して、ピント枠に入るようにカメラの向きを向けたらフォーカスリングを回してピントを正確に合わせていきます。 フォーカスリングを♾️(無限遠)の方に回していくと、星が小さくなるポイントがあります。そこがピントが合った場所になります。 ピントが合う位置は必ずしも♾️の位置とは限らず、ほとんどの場合が無限遠より少し手前になります。 ピント合わせが終わったら、フォーカスリングが動かないようにマスキングテープなどで固定しておくと安心です。 一度ピントを合わせたらズームを操作したり電源を落とすとピント位置が変わる可能性があるので注意しましょう。 もっと簡単にピント合わせを行う方法としては、月や遠く離れた明るい人工物にオートフォーカスでピントを合わせて、ピントが合ったらマニュアルフォーカスに切り替えるというやり方もあります。 ただし、真っ暗な夜空には月が出ていないこともありますし、遠くの人工物と星では若干ピントに誤差が生じる場合もあるので、正確にピント合わせを行うのであれば、フォーカスリングを回して確認するのが確実です。
その他の設定
基本的な星空の撮り方はこれまで解説したとおりですが、この他にも星空を撮影する際に変更しておいた方がいいポイントがいくつかあるので紹介します。
RAWで撮影
写真のファイル形式には大きく分けてRAWとJPEGの2種類があります。 RAWとはカメラがとらえた情報を加工せずそのまま残したもので、RAWのままではSNSで投稿したりプリントすることはできません。 一方でJPEGはとカメラやパソコンの中でRAWから必要な情報のみを残して見やすい画像に加工されたものになります。 そのため、JPEGで保存した写真をソフトを使って編集しようとすると削除された情報があるので、無理に編集しようとすると画像が荒くなってしまいます。 星景写真は撮影したあと編集することが前提になってくるのでRAWで撮影しておきましょう。 今は編集するつもりがない人でも、今後写真を編集するときのことを考えてRAWで撮影しておくか、RAW+JPEGで両方のファイルを保存できるようにしておくと便利です。
連続撮影
ペルセウスが流星群は条件次第で1時間に80個以上星が流れると言われていますが、シャッターを切った時に星が流れるか、カメラの画角に収まるかどうかは運次第のところがあります。 そのため、カメラを連写モードに切り替えて長時間撮影することで流星が入る確率が高くなります。 1枚撮りの設定から連写の設定に切り替えるだけですが、シャッターを押し続けるためにはレリーズが必要になります。 レリーズがないという方は連写撮影ではなくインターバル撮影機能を使って撮影することができます。
長秒時ノイズリダクションをOFF
シャッタースピードを長くして撮影するとノイズが発生することがあります。 長秒時ノイズリダクションをONにしておくとこの長秒時ノイズを軽減してくれるのですが、そのためにはシャッターを切っていた時間と同じ処理時間がかかります。 前述したように、流星群は何枚も写真を撮って画角に流星が入ってくる確率を高める必要があるので、長秒時ノイズリダクションをONにしておくと、撮影枚数が半分になってしまいます。 そのため、流星群のように連写で撮影する場合はこの機能をOFFにしておきましょう。
手ぶれ補正機能をOFF
星景写真では、カメラを三脚に固定するため基本的には手ブレは発生しないはずです。 手ぶれ補正がONになっていると、誤作動でブレが発生する場合があるので手ぶれ補正機能はOFFにすることが推奨されています。
モニターの明るさを下げる
ISOの設定でも説明しましたが、モニターが明るいと撮影した写真の露出が明るく見えることがあります。 モニターの明るさを下げることで、見た目の誤差を少なくすることができます。 また、モニターが明るすぎると他の撮影者の撮影に影響が出る場合もあるので、星景写真に出かける前に明るさは下げておきましょう。
まとめ
星空の撮影設定は、使用するレンズでf値とシャッタースピードが決まってくるので、あとはヒストグラムを見ながらISO感度を調整するだけなので、それほど複雑に考える必要がないことが理解していただけたでしょうか。 適正な露出に合わせると、ISOが高くなりすぎてノイズが酷くなる場合は、明るいレンズを使用するか赤道儀を使って撮影してみるといいでしょう。 撮影場所での設定変更は最小限にできるように出発前にメニューの設定は済ませておきましょう。 次回は、「カメラ・レンズ編」ということで、初心者から中級者向けに予算に応じたおすすめのカメラやレンズを紹介していきます。 最後までご覧いただきましてありがとうございました。