カメラを始めると、「風景を撮るなら20mmがいいよ」とか、「ポートレートは85mmがいいよ」というような話を聞いたことがありませんか。
「そもそも”mm”って何?」「何mmと言われてもどんな写真が撮れるのかイメージできない」と思った方もいるのではないでしょうか。
レンズによっては広い範囲を撮れるものや、遠くのものを撮るのに適したものなどの特徴があります。
この撮れる写真の広さのことを”画角”と言ますが、その画角を数値的に表したものが”焦点距離”になります。
この記事では、初心者の方向けに焦点距離とは何か、撮影目的ごとの最適な焦点距離について、レンズ選びのポイントについて解説します。
この焦点距離を理解することで、レンズを選ぶときにどんな写真が撮れるかあらかじめ想像できるようになり、自分の撮影目的にあったレンズを選ぶことができるようになります。
この記事を書いている私は、カメラ歴10年以上、フォトマスター検定試験1級の資格を取得しているYOSHIです。初心者の方がカメラを手にして写真を楽しむことができるように、カメラやレンズの話、撮影スキルなどについて紹介しています。
焦点距離とはどこの距離
焦点距離とは
”焦点距離”とは、ピントを合わせた時のレンズの位置からイメージセンサーまでの距離のことを言います。
イメージセンサーて何ってなった方は、こちらの記事をご覧ください。
焦点距離
引用:SONY
この”焦点距離”が短いと”広角”となり、写真に写せる範囲が広くなります。
反対に”焦点距離”が長いと”望遠”となって、被写体を大きく写すことができます。
この焦点距離というのはレンズによって決まっていて、焦点距離を自由に変えることができるレンズのことを
”ズームレンズ”といい、焦点距離が固定されているレンズを”単焦点レンズ”と言います。
焦点距離の表記方法
焦点距離は、レンズの商品名やレンズ自体に記載があります。
FE20−70mm F4G
引用:SONY
ここで、「20-70」のように記載されているレンズはズームレンズで、広角側は20mmまで、望遠側は70mmまで自由に焦点距離を変えて撮るができる仕様となっています。
「50」とだけ記載してされているレンズは単焦点レンズで、焦点距離は固定されます。
レンズの種類と特徴
レンズには”ズームレンズ”と”単焦点”という分け方の他に、焦点距離の長さで”広角レンズ”、”標準レンズ”、”望遠のレンズ”の3つに分類することができます。
ここでの分類は、明確な境界線が決まっているわけではないので、一般的に言われている焦点距離をもとに解説していきます。
また、ここでは35mmフルサイズセンサーを対象とした焦点距離をもとに説明してきます。
APS-Cやマイクロフォーサーズのイメージセンサーの場合は、後述する「35mm換算」という焦点距離の値を見ると分かりやすいので、記事の後半で解説します。
広角レンズ
広角レンズは、焦点距離が35mmよりも短いレンズを言います。
24mmより短いレンズを超広角レンズと言ったり、レンズの前面が球面状になっているレンズを魚眼レンズと言ったりもします。
焦点距離が短くなるほど写真は全体的にタル型に歪みます。
タル型の歪みがあると、写真としての繊細さが損なわれてしまいますが、これをあえて崩して個性的な写真にするのが魚眼レンズとなります。
広角レンズの特徴は、当たり前ですが広い範囲を写せることです。
被写体としては、山や空などの風景写真、巨大な建築物、狭い室内で全体を撮影したい場合に適しています。
また、全体にピントが合いやすいので手前の被写体から背景までくっきりとした写真を撮ることができます。
標準レンズ
DT 50mm F1.8 SAM
引用:SONY
標準レンズは、焦点距離が35mmから85mmくらいのレンズを言います。
70mm以上のレンズを中望遠レンズと言ったりもします。
人が目で見た感じと近い画角となるのは、焦点距離が50mmのレンズです。
標準レンズの特徴は、人の見た目と近いので日常の生活の中で撮りたいシーンが溢れていることです。
サッとカバンから取り出して撮るようなスナップ撮影や、人物を写すポートレート撮影に向いています。
スマートフォンのカメラって凄く使い勝手がいいですよね。
スマートフォンのレンズが広角レンズや望遠レンズだったらここまでスマートフォンが普及することはなかったでしょう。
望遠レンズ
FE 100mm F2.8 STF GM OSS
引用:SONY
望遠レンズは、焦点距離が85mmよりも長いレンズを言います。
300mm以上のレンズを超望遠レンズと言ったりもします。
スタジアムのカメラマンや飛行機をとるカメラマンがバズーカみたいなレンズを持っているのを見たことはないでしょうか。
焦点距離が長ければ長いほど遠くの被写体を大きく撮ることができますが、その分レンズ全体が長く大きくなります。
望遠レンズは撮りたいものがはっきりしていないと、使う機会が極端に少ないレンズになるため、初心者の方が最初に選ぶ選択肢としては少ないと思います。
子どもの運動会などでどうしても望遠レンズで撮りたいという方はGOOPASSなどレンズのレンタルサービスなどを利用してみるとよいでしょう。
また、望遠レンズは、広角レンズや標準レンズよりも手ぶれが目立ちやすいレンズになります。
三脚でカメラを固定したり、手ぶれ補正機能がついているカメラやレンズを選ぶとよいでしょう。
単焦点レンズの選び方
単焦点レンズとズームレンズの違い
SONY FE50mm F1.8
引用:SONY
単焦点レンズは前述したとおり、焦点距離が固定されているレンズのことを言います。
自由に画角が変えられないから、ズームレンズの方が使いやすいのでは?
と思われる方も多いと思います。
確かに、画角を変えて撮りたいだけであれば、ズームレンズを使用する方が効率的です。
しかし、スマートフォンの写真では物足りないと感じて一眼カメラを買う方は、写真の画質にはだわりたいですよね。
単焦点レンズには、背景が綺麗にボケていたり、中心部から周辺部(写真の隅)まで解像度が良い写真は見る人を惹きつける力があります。
全てのズームレンズが良くないと言うわけではありませんが、一般的にズームレンズは単焦点レンズと比較してF値が高いためボケ感が弱く、解像度が低い傾向があります。
単焦点レンズのメリット
単焦点レンズのメリットをお伝えすると「安い」と「明るい」です。
「安い」というと誤解が生じるかもしれませんが、F2.8など低いF値で撮影したい場合は、焦点距離は固定されますが単焦点レンズの方が安い場合が多いです。
そして、焦点距離が固定されることでレンズの構成がシンプルになり、ズームレンズよりもF値を低く設計することができます。
F値の詳細については別の記事で紹介しますが、F値が低く設定できるレンズというのは背景をより大きくぼかしたり、暗い場所でも画質を落とさずに明るく撮影することができたりします。
つまり、単焦点レンズというのは、焦点距離を変更できない代わりに背景をぼかしたり、解像度の高い写真を撮ることに適したレンズと言えるわけです。
また、あえて画角を変えられないことから、構図やF値の設定など”撮ることに集中できる”というのも魅力の一つかと思います。
焦点距離別単焦点レンズの選び方
ここからは、単焦点レンズを選ぶ際に、どの焦点距離のレンズを使えば自分の撮りたい写真が撮れるのかということについて解説していきます。
14mm
SONY FE14mm F1,8 FM
引用:SONY
この焦点距離はとても広範囲の撮影に適しています。
木々を全体的に撮影したいとか、部屋全体を撮影したいというような写真です。
写真の中に被写体が収まらないくらい大きい場合や全体の広がりを表現する場合はこの焦点距離のレンズを使うと良いでしょう。
ただし、広角レンズでの特徴でもあるように、写真の周辺部がタル型に歪曲してしまうので、このあたりが好みが分かれるところです。
20mm
FE 20mm F1.8G
引用:SONY
この焦点距離は広範囲に撮影できて、なおかつタル型の歪みが少ないのが特徴です。
全体的にピントがあって奥行き感を出したい写真に向いているので、風景や建造物などを撮影したい場合に適した焦点距離です。
ボケ感を出すには被写体に接触するくらい寄らないといけないので、ポートレート向きではありません。
自撮り撮影をしたり、Vlog目的の方は20mmか24mmの焦点距離を仕様して撮影している場合が多いです。
24mm
FE 24mm F1.4GM
引用:SONY
この焦点距離は広角撮影として多く使用される焦点距離です。
標準ズームと言われる広角から望遠まで扱えるレンズでも、広角側を24mmからスタートさせるレンズが多く選ばれています。
24mmの次に焦点距離が長いレンズとなると28mmになりますが、この24mmと28mmの差は実際に撮影すると大きく感じます。
14mmや20mmほど広がりのある写真は撮れませんが、奥行き感を強調しすぎない自然な見た目に近い写真を撮ることができます。
35mm
FE 35mm F1.8
引用:SONY
この焦点距離のレンズはスナップ撮影やテーブルフォトの撮影に選ばれることが多いです。
小型に設計されたレンズも多く、重量も軽くなり持ち運ぶのにちょうどいいサイズ感というのも魅力のひとつです。
ポートレート撮影に使用する場合は被写体により近づいて取る必要があります。
50mm
FE 50mm F1.4 GM
引用:SONY
この焦点距離は人の目で見る画角と一番近いので、とても扱いやすい焦点距離です。
初めて単焦点レンズを買うという方で、どういう焦点距離のレンズにしようか迷っている場合は、焦点距離50mmのレンズを選んでおけば大きく外れることはないでしょう。
背景が綺麗にボケるためポートレート撮影にも向いています。
ペットや小さなお子さんの成長を記録したい方にはおすすめの焦点距離です。
85mm
FE 85mm F1.4 GM
引用:SONY
この焦点距離からは望遠レンズに分類されるようになり、よりボケ感のある写真を楽しむことができます。
ポートレート撮影では、背景を思い切りぼかして人物を引き立たせるような印象的な写真を撮ることができます。
また、遠くの被写体を撮影するのにも適しているので、鉄道やパレードなど近くに寄れない被写体を撮りたい方にはおすすめです。
一方で手ブレも発生しやすくなるので、しっかりと構えて撮影するか三脚に乗せて撮影するなどの工夫が必要になります。
100mm
FE100mm F2.8 STF GM OSS
引用:SONY
この焦点距離では、背景のボケ感に加えて、遠くのもの(建物など)と近くのもの(人物など)との距離感が近くに感じる圧縮効果という特徴が現れます。
スカイツリーの上に大きな月が乗っかるような写真を見たことはないでしょうか。
このような効果を意図的に表現したい場合にもおすすめです。
100mmあたりから運動会などのシーンで活用できる焦点距離となりますが、かけっこのようにだんだん被写体が近づいてくる競技では、焦点距離の自由度が高いズームレンズをお勧めします。
400mm
FE 400mm F2.8 GM OSS
引用:SONY
これよりも望遠となる焦点距離はモータースポーツやサッカーなどの競技、飛行機や野鳥などの撮影に向いていますが、専門で撮影する以外は使用頻度が極端に少ないレンズとなります。
加えて、望遠レンズは価格の面でも高額となるので、よほど購入したいレンズがない場合は手を出さないか、レンタルで試してから購入を検討するといいでしょう。
センサーサイズによる焦点距離の違い
最後に、カメラのイメジセンサーによって焦点距離の見方が変わることについて解説します。
ここでは、35mm換算という言葉について細かい理屈は抜きに簡単に紹介します。
35mm換算
イメージセンサーは大きさによって規格が異なり、大きく分けると35mmフルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズという順に小さくなっていきます。
同じ焦点距離のレンズを使ってもセンサーサイズが異なると、画角が狭くなったりします。
例えば、APS-Cのセンサーを使用しているカメラに焦点距離が50mmのレンズを使用して撮影した画角と、35mmフルサイズセンサーを使用しているカメラに75mmのレンズを使用して撮影した画角はほぼ同じになります。
つまり、同じ焦点距離のレンズを使用してもAPS-Cのカメラの方が、35mmフルサイズのカメラに比べ約1.5倍拡大して見えるというわけです。
同じようにマイクロフォーサーズのカメラの方が、35mmフルサイズのカメラより2倍拡大して見えることになります。
なぜこのような現象になるのかを説明すると長くなってしまうので省略しますが、使用するカメラによって画角が変わると、焦点距離を見ても実際の画角をイメージしずらくなってしまいます。
そのため、このレンズで35mmフルサイズのカメラで撮影する場合はこの焦点距離になりますと計算してくれたものが35mm換算という数値となるわけです。
結論だけまとめるとAPS-Cは約1.5、マイクロフォーサーズは2倍を焦点距離に掛け算したものが35mm換算された焦点距離ということだけ覚えていただければ大丈夫です。
まとめ
”焦点距離”というのは、画角を数値的に表したもので、数値が小さくなるほど”広角”に、大きくなるほど”望遠”になります。
焦点距離を自由に変更できるレンズを「ズームレンズ」、焦点距離が固定されているレンズを「単焦点レンズ」と言います。
単焦点レンズのメリットは、「安い」「明るい」です。一般的にF値を低く設定できて、同じF値のレンズであれば単焦点の方が安く購入することができます。
標準ズームから単焦点レンズへ
初心者の方が初めてレンズを購入する場合は、まずはどのシーンでも撮影できるように標準ズームレンズを1本購入することをお勧めします。
予算がなければカメラとセットで売っているキットレンズを使用するのもいいですが、サードバーティ製のレンズで安くて性能の良いレンズが見つかればそちらを検討するといいでしょう。
次に単焦点レンズが欲しくなったら、一番良くとるシーンで使う単焦点レンズを選んでみてください。
例えば、風景写真が好きなら20mmの、子どもを撮るなら35mか50mm、植物や鉄道などを撮るなら100mmあたりの焦点距離を選ぶといいでしょう。
いかがでしたでしょうか。この記事がレンズ選びのお役に立てれば嬉しく思います。最後までご覧いただきありがとうございました。