近年、YouTubeをはじめとした動画配信サービスの普及により、一眼カメラを使って動画を撮る人が増えてきています。
こうした動画人気を背景に、SONYではVLOGCAMという動画撮影に特化した一眼カメラをシリーズ化することで高いシェアを獲得しています。
カメラの動画性能が拡充されていく中で、動画撮影に必要な性能の違いを理解できないという方も増えてきています。
性能について理解がないままカメラを購入すると、結果的にオーバースペックで高価なカメラを購入するになる可能性があります。
そこでこの記事では、動画用の性能のうち
「AF性能」「手ぶれ補正」「記録方式」の3つのポイントに絞って分かりやすく解説します。
この3つのポイントを理解することで、あなたの撮影用途に合ったカメラを正しく評価でき、後悔のないカメラ選びに繋がりますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を書いている私は、カメラ歴10年以上、フォトマスター検定試験1級の資格を取得しているYOSHIです。
初心者の方がカメラを手にして写真を楽しむことができるように、カメラやレンズの話、撮影スキルなどについて紹介しています。
また、私のブログではコンデジや一眼カメラを買おうか迷っている人が、自分にはどんなカメラやレンズが合うのかという質問にお答えしていますので、気になる方は
お問い合わせページからご連絡ください。
AF性能は被写体の認識精度と追従性を評価する
AF性能は、被写体の認識精度と追従(トラッキング)性能を評価します。
AF(オートフォーカス)は、カメラが自動で被写体にピントを合わせてくれる機能で、動画撮影では静止画以上に重要な性能になります。
静止画であれば、被写体を認識できなくてもピントを合わせる位置を固定することで撮影できますが、動画撮影ではカメラが被写体を認識して、さらに撮影中ピントを合わせ続けなければなりません。
動きのある人物、動物、乗り物などの被写体を撮影する場合には、特に被写体認識精度と追従性が重要となります。
AIによる被写体認識精度を評価する
最近のカメラには、AIを使った被写体認識機能が搭載されています。
この被写体認識機能が、どのようなアルゴリズム(計算式)で設計されているかで認識精度が大きく異なります。
例えば、SONY最新の被写体認識技術である「
AIプロセシングユニット」は人物の姿勢など骨格情報をもとにAIが顔の位置を認識するため、後ろ向きなど顔が隠れていても顔の位置にピントを合わせることができます。
「AIプロセシングユニット」以前に登載されていた「
リアルタイム瞳AF」は瞳が見えていないと顔を認識することができなかったので、このアルゴリズムの進化で人物の瞳の認識度が
約60%も向上しています。
また、対象とする被写体も、人物と動物に加えて、鳥、昆虫、乗り物などが追加されています。
このように、AIによる被写体認識精度は少しずつ進化しているので、どのアルゴリズムで設計されているかが重要となります。 言うまでもなく、最新のアルゴリズムの方が精度が高くなっていますが、その分価格に転化されているのでバランスを見ながら検討する必要があります。
追従性能は実機を操作するかレビューで評価する
被写体の追従性能は、被写体認識精度と強い関係性があるので、AIプロセシングユニットのように高い被写体認識機能が登載されているカメラほど追従性能は高くなります。
SONYでは「
リアルタイムトラッキング」、CANONでは「
EOS iTR AF X」という最新のトラッキング技術が使用されています。
追従性能が高いと、結婚式などでたくさんの人の中から花嫁だけにピントを合わせ続けたり、スポーツのように激しい動きをしている被写体からピントが外れないなどメリットがあります。
被写体の追従性能は、仕様では判断しにくいため実機を触ってみたり、
レビューや比較動画などを見て判断するのが確実になります。
手ぶれ補正機能は電子式と電子式の機能を評価する
手ぶれ補正機能は、電子式手ぶれ補正と光学式手ぶれ補正の2つの補正機能を評価します。 特に動画撮影をメインにする場合は、電子式手ぶれ補正の性能を評価します。
電子式手ぶれ補正とは、イメージセンサーの最大領域よりも狭い範囲で撮影して、手ぶれにより欠損した部分を余白の画素で補う機能です。
光学式手ぶれ補正とは、カメラに向かって照射された光の光軸のずれを中心にくるように修正する機能で、カメラとレンズに登載されています。
動画撮影では、2つの手ぶれ補正機能の組み合わせで手ぶれを抑えることになります。
電子手ぶれ補正はクロップ率で評価する
電子手ぶれ補正は、イメージセンサーの最大領域を使用せずに、狭い範囲で撮影することで、
ブレが発生した分を余白の画素で補って手ブレがないように見せる機能です。
そのため、電子手ぶれ補正を使用すると、画角が狭くなります(クロップされる)。
このクロップ率は選択する機能や機種によって異なり、クロップ率によって使用するレンズの焦点距離も変わってくるので、とても重要です。
例えば、SONY ZVE-1で使用できる電子式手ぶれ補正機能
「アクディブモード」では約1.12倍、電子手ぶれ補正と光学式手ぶれ補正を組み合わせた
「ダイナミックアクティブモード」では約1.43倍に画像が拡大されてしまいます。
クロップ率はカメラメーカーが公式に発表していないので、ブログやyoutubeで検証している方の記事を確認するのがいいでしょう。
このように、
電子式手ぶれ補正は強力に手ぶれを抑えてくれる反面、画角がクロップされてしまうのでレンズ選びに注意が必要です。
画角がクロップされたくないのであれば、ジンバルを使用して手ぶれを抑えるという方法も検討しましょう。
光学式手ぶれ補正は、何段分の補正機能があるかで評価する
光学式手ぶれ補正は、カメラに向かって照射された
光の光軸のずれを中心にくるように修正する機能です。
光学式手ぶれ補正は「7段分 光学式5軸ボディ内手ぶれ補正」などと表記されています。
このうち重要になってくるのが、
何段分の補正効果があるかというものです。 段というのは露出係数(明るさ)のことです。
1段下げるというのは、シャッタースピードを1秒から1/2秒にするというように、2倍短くするということになります。
これによりカメラに取り込む光の量が1/2になります。 7段分の手ぶれ補正効果というのは、手ぶれ補正機能を使ってシャッタースピード1秒で撮った写真と、手ぶれ補正機能を使わずに1/125秒で撮った写真とブレの大きさは同じくらいになるというものです。
つまり、
段数が高ければ高いほど暗いシーンでの撮影でもシャッタースピードを上げずに撮影できたりISO感度を下げてノイズを少なくした撮影ができるというわけです。
動画編集を考えている人はフレームレートbit深度を評価する
これから動画編集をやってみたいと思っている方は、フレームレートとbit深度の2つは理解しておく必要があります。
フレームレートは主にスローモーション撮影に関係する性能で、数字が大きいほどゆっくりな
スローモーション動画にすることができます。
bit深度は色編集(カラーコレクション、カラーグレーディング)に関係する性能で、bit深度が高いほど
色編集の自由度が高くなります。
フレームレートやbit深度などの記録方式は、高くなるほど高度な編集ができる一方で、データ容量が大きくなるのでカメラだけでなくSDカード、SSD、PCの容量や処理速度が高くなければ編集に時間がかかるため、
作業環境にも注意して評価する必要があります。
4K撮影時のフレームレートを評価する
フレームレートは、
1秒間に何枚の画像が使われているかを数字で表したものです。
1秒間に30枚の画像が使われている場合は「30P」や30fps(frames per second)」と表記されています。
この数字が高いほど、滑らかな映像になります。
テレビでは30Pが、
シネマでは24Pの画像が使われていて、動画編集でも最終的に書き出す時には30Pか24Pのどちらかに設定するのが一般的です。
撮影時にフレームレートを高く設定できるとそれだけスローな動画に編集することができます。 例えば動画を撮影するときに120Pで撮影して、編集後のフレームレートを30Pにすれば4倍のスローモーション映像を見せることができます。
スローモーション映像を撮りたいのであれば、フレームレートをどれだけ上げれるかを確認しておく必要があります。
ここで注意するのが、
フレームレートを上げると解像度が低下するる場合があるということです。 フレームレートを30pから120Pに上げると、当然1秒間に必要なデータ量が4倍になります。 そのため、カメラの画像処理能力が追いつかない場合は、解像度を落として対応する必要があるのです。
具体的には、30Pでは4K動画を撮影できたものを120Pでは解像度が1/4のフルHDに落として撮影するということです。
このためフレームレートを評価するときの基準は、
4K動画を撮影するときにフレームレートがいくつになるかで評価します。
bit深度は色編集をするかしないかで評価する
bit深度は、色の階調(グラデーション)をどれだけ滑らかにするかを表したものです。
動画の記録方式を見ると、「4:2:2 10bit」などと表記されています。
このうち「4:2:2」という数字が
クロマサブサンプリングというもので「10bit」と表記が
bit深度になります。
クロマサブサンプリングとは、
色情報をどれくらい間引いているかを表したものになりますが、動画編集に大きな影響がないので説明は省略します。
bit深度は数字が大きいほど、
色の階調が滑らかになります。
例えば、「赤」という色でも、白に近い薄い赤から黒に近い濃い赤まであります。 これを8bitであれば256通りに分解して色を表現することなりますが、10bitだと1024通りに分解することができるため、細かい色の違いを表現できるという訳です。
色というのは光の3原色である「R(赤)、G(緑)、(青)」の掛け算で作られるため、8bitだと約1677万色、10bitだと約10億7374万色もの色を表現することができるということになります。
8bitと10bitの違いは色を編集する段階で影響してきます。
色編集したい場合は、通常「log」という設定で撮影します。 「log」で撮影すると、色が薄くて白飛びや黒つぶれが少ない階調を持たせた映像を撮ることができます。
log撮影することで、後から色を足しやすく、階調を持たせた色表現ができるようになります。
この時に、豊富な色情報から色を当てること(カラーグレーディング)で、色の表現が滑らかになります。
つまり、
10bitは、log撮影してカラーグレーディングをする人にとってはあったほうが望ましい性能ですが、カメラで撮った色をそのまま使う場合には8bitで十分ということになります。
まとめ
動画用に必要な機能は「AF性能」「手ぶれ補正」「記録方式」の他にも、「内臓マイク」「モニター」「連続撮影時間」などの評価ポイントがありますが、今回はその中でも重要なポイントについて3つ紹介させていただきました。
動画編集まではやらないという方であれば、まずはAF性能と手ぶれ補正機能を重視してカメラを選ぶといいでしょう。
特にAF機能はAIの進化で驚くほど性能が向上しているので、
予算に余裕があるなら最新のAFシステムが入ったカメラを購入するのがいいでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
この記事が皆様のカメラ選びの参考となり、あなたにとって最高の一台を手にするきっかけになれば嬉しく思います。